テキスタイルメーカー紹介、揚原織物工業株式会社

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週末、ハクモクレンが咲き始めていました。一雨毎に暖かくなって、梅・ミツマタ・沈丁花・ヒメコブシも順調に開花しはじめて自宅裏の尾根緑道も花の季節が始まっています。ソメイヨシノやユキヤナギノ季節も間もなくですね。冬の間は寒くて引きこもりがちでしたがポケットボトルを忍ばせてぶらぶら過ごせる週末が待ち遠しいテキスタイル担当の瀧澤です。

今月は取引先の生地メーカー揚原織物工業株式会社とベルベット織物についてチョット書いてみました~

 

ベルベットとは

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先シーズンから大幅に引き合いが多くなっているベルベット織物ですが、代表的なパイル織物であるベルベット(VELVET)は、ビロード(VULEDO)や天鵞絨(てんがじゅう)とも呼ばれ日本には1542年(天文11年)にポルトガルから伝わったとされています。なんと同時期に種子島に伝来した鉄砲はこのビロードに包まれていたのだそうです。その後、日本のベルベットは京都の西陣や滋賀県の長浜地区を中心に生産されてきました。当時のベルベットは縦緯・パイル共にシルクを手織りした非常に稀少で高価な布でした。

ベルベットには大別して2通りの織り方があります。その1つが有線(輪奈)ビロードと呼ばれる伝統的な織り方です。有線ビロードはその名のように細い針金を織りこんでループ(輪奈)を作り、このループをカットして毛羽を出す織り方で、現在では針金に変わってポリエチレンのテグスを使用しているメーカーもあります。西陣や長浜では現在も伝統的な絹の輪奈ビロードが織られていて伝統工芸品にも指定されています。

 アゲハラベルベット

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一方、私達がファッションで馴染のあるベルベットの多くを現在ではアゲハラベルベットで有名な揚原織物工業が生産しています。弊社の取引先でもあるアゲハラベルベット株式会社は福井県の鯖江市に本社工場があり、戦前までは絹羽二重を織っていたそうです。戦後ベルベット製造に取り組み、一貫生産の出来る世界でも卓越したベルベット専門メーカーです。ここで製造されるベルベットは二重織にした生地の間をカットしてパイルを作る方法で製造され、1度に2枚の織物を作る事が出来ますが、非常に精密で繊細な技術が必要です。

 ベルベットの用途は

昨シーズンから続いているベルベット流行は、ネイルや靴から始まりパンツやジャケット、ワンピースと幅広いアイテムに使われています。しかしアゲハラでの国内アパレルメーカー向け生産は年間生産量の約10%、海外アパレル向けの輸出が凡そ20%でファッション用途は合わせて全体の約3割。インテリヤ&中近東向け輸出が1割なのだそうです。では残りの60%は何に使われているかというと産業資材向けなのです…でもベルベット⇒産業資材って???

 フィルムパトローネの遮光素材

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かつてフィルムパトローネのポートの遮光素材に使われていた黒いベルベットを御記憶の方も多いと思います。遮光性があってフィルムに傷をつけずにスムーズに送り出せる資材として世界中の殆どのフィルムメーカーが使用していました。ひとつのフイルムパトローネに使用する量はわずかですが世界中のフィルムに使われていたのですからその需要量は…御想像におまかせします(笑) えっ、今はほとんどがデジタルカメラになってしまったって…そうなのです、実はフィルムの遮光素材に変わって現在の資材需要の大半を占めている用途がベルベットにはあるのです。

 液晶画面のラビングクロス

最近では皆さんの日常に欠かせないスマートフォンやPC、TVの液晶画面を製造する際のラビングと言う工程に実はベルベットが使用されています。ラビング法と呼ばれるこの方法は液晶面の内側に液晶配向膜を塗布しベルベットを巻いたローラーで一定方向に一定圧力で擦る事によって液晶分子の配向方向を一定にする技術で、厳密な機構は判っていないらしいのですが、現在のところ精度やコストから見てベルベットを使用するのが最も適していて、中でもアゲハラのベルベットを使用した液晶は最も品質が安定しているのだそうです。アゲハラベルベットでは次世代の需要に向けた研究開発も引き続き行っていて、高品質のベルベット織物を安定的に製造・供給できる出来る技術と生産背景は世界でも唯一のものと言えるとおもいます。

揚原織物工業株式会社/アゲハラベルベットのホームページはこちらです⇒http://agehara.jp/

ファッション性も兼ね備えたハイクォリティなベルベットをファッション用途に是非使いたいと思われた方はコチラまでお問い合わせください。

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TAKIZAWA

テキスタイル課 課長株式会社クロップオザキ
テキスタイル担当のTAKIZAWAです。
生地のことなら何でもお聞きください。趣味がトレッキングや山登りなので、アウトドアウェアにもちょっとだけ詳しいです。「テキスタイルコラム-Textileから見た世界」を担当しています。私のミッションは失われつつある美しい地球環境を500年後の子孫に残すこと…誇大妄想Innovatorです(笑)

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