簡単な繊維の話はじめました~その2
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最終更新日:2018/12/03
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テキスタイル担当の瀧澤です。
6月のブログに引き継き、繊維の基礎講座をお届けします
夏と言えば~麻!について…
麻(アサ)とはなにか?
一般的に麻とはシャリ感やハリがあり通気性に富む繊維で、天然繊維の中で最も熱伝導性が大きく体温を速やかに放熱して涼感を与えてくれます。水分の吸湿・発散も早いため代表的な夏向けの素材として認識されています。洗いたてのリネン100%のシーツなんて気持ち良い~ですよね♪
麻(アサ)と言う植物はあるの…?
ところで麻とは植物(茎や葉)の繊維の総称で20種類近い種類があります。亜麻(リネン)・苧麻(ラミー)・黄麻(ジュート)・大麻(ヘンプ)・サイザル麻etc…つまり靭皮繊維/葉脈繊維(じんぴせんい/はみゃくせんい、植物の茎や葉から取れる繊維)の総称を日本では麻(アサ)と呼んでいるのです。(植物繊維には綿やカポックに代表される種子毛繊維もあります)ですから、リネン(亜麻)もラミー(苧麻)もヘンプ(大麻)もジュート(黄麻)も皆違う植物から取れる繊維で性質も違っているのに日本では全部ひっくるめて“麻”と呼んでるわけやね~
神事とも深く結びついた大麻草
元来、日本(和名)でアサと呼ばれていた植物は、みなさんも大好きなあの大麻(おおあさ・たいま・ヘンプ)です。大麻は古来より日本にも広く分布していて終戦前までは主要作物として栽培されていました。茎や葉から繊維をとる以外に種子は食用や採油、家畜の飼料・燃料等幅広く利用でき、神事とも古くから結びついたとても生活に密着した植物だったのです。仏具や子供の産着、刺し子などにも麻の葉の幾何学模様が多く用いられていることからも生活と密着した暮らしに欠かせない繊維植物であったことがうかがえます。
むかしから使われて来た繊維
日本で古代から近代まで最も広く利用されてきた繊維は大麻(ヘンプ)と苧麻(ラミー)です。特に大麻は縄文時代にはすでに広く使われていたことが遺跡の発掘などから判っています。縄文土器の縄目などにも大麻の縄が使われていたのかも知れません。絹(シルク)の利用は弥生期から行われていたそうですが、綿(めん・わた)が本格的に栽培されるのは江戸中期以降、リネン(亜麻)や羊毛の利用が広がるのは明治期になってから、それ以前の日本人の生活に麻(大麻草)は無くてはならない繊維植物であったことから植物の茎や葉から取れる繊維をひっくるめてアサと呼ぶようになったのですね!たぶん…きっとね。
伝統的な麻織物
日本の伝統的な麻織物には越後上布・小地谷縮・近江上布・能登上布・宮古上布・八重山上布と、そのほとんどが苧麻(ラミー・からむし)を原料としたものが中心で(近江上布は緯糸に大麻糸を使うものもある)現在では日本の麻=苧麻と言えると思います。また家庭用品品質表示法で麻と表示できるのは亜麻(リネン)と苧麻(ラミー)に限られその他の麻繊維は指定外繊維(素材名)で表示することが義務付けられています。
その他の麻繊維を利用した織物
ここからは日本で今も伝得られている身近な植物の繊維を利用した伝統織物を紹介します~
芭蕉布(ばしょうふ)
マニラ麻の原料となるバショウ科(バナナみたいな)の植物の近似種でイトバショウを原料とした沖縄の織物で、国の重要無形文化財に指定されています。
アットゥシ
オヒョウやハルニレ、シナノキ等の木の内皮から取れる繊維を糸にして織ったアイヌ民族の民族織物でアットゥシ・アッシ織・厚司織などと呼ばれる。
しな織(しなおり・信濃布)
しなの木の皮の繊維から織られる布で現在では帽子、バック、暖簾などの用途に山形県鶴岡市や新潟で織られている。
葛布(くずふ・かっぷ)
マメ科の多年草で秋の七草の1つでもある葛は地下茎が葛餅や漢方の葛根湯の原料として利用され、市街地でも普通に見られる身近な植物でその蔓の繊維で織られる織物。新石器時代には使われていたと言われる古代布。日本では現在は静岡県掛川市の周辺で織られている。
藤布
藤の蔓の繊維から織られる古代布の1つで昭和に入り消滅したと考えられていました。後の民族調査で丹後の世屋と言う山里で発見・復元され現代の技術と融合して丹後地域で織られています。
今回は日本で麻と呼ばれている繊維について書きました
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TAKIZAWA
生地のことなら何でもお聞きください。趣味がトレッキングや山登りなので、アウトドアウェアにもちょっとだけ詳しいです。「テキスタイルコラム-Textileから見た世界」を担当しています。私のミッションは失われつつある美しい地球環境を500年後の子孫に残すこと…誇大妄想Innovatorです(笑)

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