テキスタイルコラム-羊毛の利用のはじまり

羊をめぐる冒険  vol 7

羊毛利用のはじまり

Erinthecute, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
Erinthecute, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

およそ9500年前に食肉利用が目的で家畜化されたと考えられる羊の二次産物である毛やミルクの利用がいつ頃から行われるようになったのか? 紀元前3千年末頃のイラクのウル(Urで発見された文字記録には少なくとも5つのカテゴリーの羊毛に関する記述や2万7千頭もの羊の群れを管理する羊飼い、そして白い羊の話も登場し、紀元前2千年記の粘土板書にはウール製品がメソポタミアの重要な輸出品であったことが記述されています。また、動物考古学の統計データーからは紀元前4千年頃には羊毛利用の傾向が各地で強く見られることなどから。紀元前5千年頃には羊毛の利用がかなり広まっていたのではないかと推測されます。一方で実際にウールが使われた織物(カーペット)が発見されるのはアルタイ山脈パジリク渓谷のスキタイ族の墳墓遺跡の物で、紀元前500年頃(およそ2500年前)まで待たなければなりません。

 

奇跡のパジリク絨毯

ソースが不明Unknown source, Public domain, via Wikimedia Commons
ソースが不明Unknown source, Public domain, via Wikimedia Commons

ウールは日常で使用している限りは充分な耐久性を持った繊維です、しかし動物性の繊維は自然環境に放置されるとたちまち分解されてしまうため、麻などの植物繊維と比べても古代のテキスタイルが発見されることは非常に稀です。奇跡の発見とも言われるパジリク絨毯(写真)が保存されていたのも幾つかの偶然が重なって永久凍土の中で冷凍状態が保たれていたからです。この墳墓遺跡からはウールに関する物だけでもフェルトの帽子やスワンの模型、壁掛け、馬の鞍カバー。羊とラクダの毛で織られたスカート、白い羊毛のストッキング等が保存されていて、先史時代の遊牧民の暮らしに羊毛がいかに重要な役割を果たしていたのかをうかがい知ることが出来ます。これらの遺品は凍結状態で保存されていた為、織り糸の色も鮮やかなまま残り。原料には様々な種類の羊毛が使われていることから、当時すでに広い範囲で交易がおこなわれ羊の品種間での交換や交配も盛んであったことが想像されます。もし、古代のテキスタイルがもっと沢山残されていたらという残念な気持ちと共に、当時の人達がどんな風に羊を飼い、糸を紡いで織物を製作していたのかを想像すると古代のテキスタイルへのロマンを感じますね…(なんかテキスタイルコラムっぽい発言だわ~)

類稀な繊維ウール

およそ9500年前に農耕と共に羊の牧畜が行われるようになり、当初は食肉として利用が主な目的であった羊から副産物として二次的に利用されてきた羊毛が2千年程の間に広く利用されるようになり、より良い羊毛が得られる形質を備えた個体を選んで繁殖を繰り返すことによって羊毛が二次生産品から重要かつ主要な生産品へと変わって行ったのは羊毛の持っている繊維としての機能や性能が人類の生活をより快適にするために必要欠くべからざるものだった事が大きな要因だと思われます。いったい人類を魅了した羊毛にはどんな特徴があるのでしょうか?

人類を魅了した羊毛繊維の特徴

en:ユーザー:Tkn20, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
en:ユーザー:Tkn20, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ウールには相反するいくつかの特性があります。例えばウールの保温性は寒さを防ぐと同時に熱から守ってくれるたり、汗などを発散させて気化熱を奪い涼しくさせる効果と水蒸気を吸収するときに熱を発して冷えを防ぐ効果や天然の抗菌・防臭性能があり。繊維が絡まり合ってフェルト化することで敷物や防護服・ゲル(遊牧民の移動式住居)の屋根や壁になり…使えばつかうほどにこれらの機能・性能が人類を魅了していった事は容易に想像できます。ウール繊維の持っている機能性については下記の弊社リンク

「&CROPアパレル資材辞典ウールとは」にまとめてありますので興味のある方は参考にして下さい。リンク内ではウールの鱗の秘密と特徴と言う項目で下記の内容について簡単に解説しています。

ウールの鱗の秘密と特徴

①スケールとフェルト化

②クリンプ・伸縮性

③吸湿性と放湿性

④疎水性・防水性・蒸れにくさ

⑤抗菌性と防臭性

⑥吸湿発熱効果

⑦難燃性

 

羊毛を効率的に収穫する方法

No machine-readable author provided. Ytrottier assumed (based on copyright claims)., CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
No machine-readable author provided. Ytrottier assumed (based on copyright claims)., CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

羊がどのように改良されて行ったのかは想像するしかありませんが、品種の改良が進んで羊毛が効率的に利用できるようになって行くとある道具が現れます。私たちにも身近なその道具とは…?

次回は羊毛を効率良く収穫するのに欠かせない重要なある道具に迫ります(笑)

では~

参考にした書籍とWEB

サリー・クルサード「羊の人類史」

羊毛のドメスティケーションウールの発達と紡錘車 須藤寛史

 

 

 

 

 

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TAKIZAWA

TAKIZAWA

テキスタイル課 課長株式会社クロップオザキ
テキスタイル担当のTAKIZAWAです。
生地のことなら何でもお聞きください。趣味がトレッキングや山登りなので、アウトドアウェアにもちょっとだけ詳しいです。「テキスタイルコラム-Textileから見た世界」を担当しています。私のミッションは失われつつある美しい地球環境を500年後の子孫に残すこと…誇大妄想Innovatorです(笑)

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