簡単な繊維の話はじめました~その4

天然繊維編 綿(ワタ)のはなし

綿(わた・ワタ)とはアオイ科ワタ属の多年草の総称

ワタはアオイ科ワタ属の植物の総称で同じアオイ科のオクラにそっくりな黄色い花を咲かせます。日本でも江戸中期以降に和綿と呼ばれる品種が盛んに栽培されていましたが、元来綿の栽培には生育期に高温・多雨、収穫期に乾燥した気候が適していて日本の気候は綿花の栽培にはあまり向いていないのですね。と言うわけで現在国内では商業取引になるような綿の生産はほとんど行われていません。

綿の品種

綿には大きく分けて4系統の野生種の綿にプラスして品種改良のために交配が繰り返された多くの栽培種の綿があり、加えて遺伝子組み換えで生み出された品種が存在しています。そして現在ではオーガニックコットン等を除いて商業的に栽培される綿の大半が遺伝子組み換え品種になっています。

綿と農薬

綿栽培では安価で品質の安定した綿を大量に生産する目的で病害虫予防のための土壌消毒、除草の為の除草剤散布、害虫駆除のための殺虫剤散布、収穫期の手間を省くための枯葉剤散布等々多量の農薬・薬剤が使用されていて1枚のTシャツに150gもの農薬が使用されていると言う試算もあります。ただし普通のコットンの残留農薬を科学的に調べてもオーガニックコットンと判別がつかないレベルなのだそうです。だからオーガニックコットンの意味合いはお肌にやさしい等の表面的な事ではなく生産者や環境にインパクトの少ない綿の生産量をいかに増やしていくかということなのですね。

綿の生産地と国内の綿栽培

綿の生産量が多い国を順番に挙げるとインド・中国・米国・パキスタン・ブラジル・ウズベキスタン…となっており勿論日本はリストにも出てきません。綿の栽培の歴史は文献によりまちまちで8000年~5000年前と言われています。メキシコのテワカン渓谷の洞窟遺跡からは紀元前5000年前の綿布が見つかっているそうです。日本の綿の生産は戦国期頃から行われるようになり江戸時代になると主に中部以西で盛んに栽培されました。しかし明治期になると海外からの価格の安い綿が主流になり国内での綿栽培は衰退しました。

綿の4つの系統

綿(ワタ)には大きく4つの種の系統があって 旧大陸綿-2系統 と 新大陸綿-2系統に分かれます。

  1. G.arboreum(アルボレウム)旧大陸綿
  2. G.herbaceum(ヘルバケウム)旧大陸綿
  3.  G.barbadense(バルバデンセ)新大陸綿
  4.  G.hirsutum (ヒルスツム)新大陸綿

旧大陸綿は小型の品種で繊維が太く短く、新大陸綿は大型の品種で繊維が細く長いのが特徴です。旧大陸綿のアルボレウムとヘルバケウムは旧大陸(インド周辺)で発生しアルボレウムは日本に渡って和綿として栽培された品種と考えられています。また中央アメリカ周辺で発生した新大陸綿のヒルスツムは米国で品種改良されてアプランド綿と呼ばれ世界各国で栽培されていて栽培綿花のおよそ9割を占めています。そして新大陸のペルー北部で発生したバルバデンセ種は改良されながら世界に広がりペルー綿・海島綿・エジプト綿・スーピマ綿などの超長綿と呼ばれる高級ブランド綿として栽培され流通しています。

まとめ

綿(ワタ)は私たちの生活に欠かせない繊維です。綿花としてひとくくりにされる栽培品種でありながら、その生い立ちの違い、品種改良の歴史、また食用でないことから大量に使われる農薬や殺虫剤・遺伝子組み換えの問題等々その栽培生産に多くの問題を抱えています。最も身近な繊維であるだけに環境への負荷を極力減らしたオーガニックコットン栽培の取り組み等がもっと広がって行くように個人でも出来る事から取り組んで行きたいですね。私の友人も神奈川県の藤野と言うところで毎年和綿を栽培して糸紡ぎや織物を作製するワークショップを行っています。興味のある方はテキスタイル担当の瀧澤までお問い合わせください。

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TAKIZAWA

テキスタイル課 課長株式会社クロップオザキ
テキスタイル担当のTAKIZAWAです。
生地のことなら何でもお聞きください。趣味がトレッキングや山登りなので、アウトドアウェアにもちょっとだけ詳しいです。「テキスタイルコラム-Textileから見た世界」を担当しています。私のミッションは失われつつある美しい地球環境を500年後の子孫に残すこと…誇大妄想Innovatorです(笑)

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