ファッション産業でのサスティナブルは意識のパラダイムシフト

テキスタイルアドバイザーの滝澤です。最近、ファッション作業でもよく耳にするようになったのが、「サスティナブル(持続可能性)」という言葉。今回はこの「サスティナブル」について書いてみました。

サスティナブルについて

正直に言ってしまえば、これまでサスティナブルを仕事と関連づけて考える機会はほとんど無く、エコやオーガニックの商品はお客様から要望があれば提案するという程度の関心と関わり方が今の仕事での立ち位置です。最近に頻繁に耳にするようになったこの持続可能性という言葉の意味に関心を向けるとサスティナブルな取り組みはとても多様で複雑な感じがして、問屋という立場で何ができるのか…?まずは自分の頭を整理する意味でこのブログを書き始めたので、勉強不足の部分も含めてあくまでも現時点での私の個人的な理解です。思い違いや間違えがあればご指摘をいただければありがたいです。

 

15000年続いた縄文のサスティナブル・コミュニティ

 

はじめにサスティナブルについて考えたときに縄文と言うキーワードが浮かんだのは現在住んでいる場所が多くの縄文遺跡が点在していた地域で、ニュータウンとしての開発に伴って大々的に行われていた発掘調査がいつも身近にあった事や、その出土品を管理・展示している東京都埋蔵文化財センターが近くにありそこでは展示物の土器に触れることもできて(触ると縄文の波動を感じる)縄文を身近に感じていたからだと思います。私が中学の頃、社会科授業では縄文時代は弥生時代に先立つ、農耕文化が構築される以前の長い停滞の時代という扱いでほぼスルーでした(笑)。現在はいろいろな角度からの研究が進み、縄文人は高い精神性を備え、日本中の集落間に張り巡らされた物流ネットワークを持ち、世界文明の雛型となった究極のサスティナブル・コミュニティであった事が次第に明らかになってきています。これからの持続可能な社会の構築に向け縄文の時代から学ぶことはとても多いのではないかと思っています。

 

コンポストをはじめてみた…

 

7月はじめに廃物利用で自作のコンポストを自宅に設置しました。小型の一杯になったら隣に穴を掘って移動するタイプですが、生ごみの量は10分の1くらいに減り、はじめてみると買いものをする時の意識も変わり、これをキッカケにその他のゴミの減量も意識し始めたのだけれど、ライフスタイルを大幅に見直さないとゴミは簡単には減ってはくれません。数年前からはマイボトルを持ち歩いていてペットボトル飲料はできるだけ利用しないように心がけています。こうやって改めて意識すると紙もプラもパッケージゴミの多さに驚きます。日常の生活で出るゴミや生活排水がどのくらい環境を汚しているのかを普段はあまり意識していませんでしたが、もしインフラが停止して1ヶ月分もしくは1年分のゴミや排水が身の回りに溜まっていったと想像するとかなり憂鬱な気分になりますよね。

 

 

日本国内の高い人件費ではリサイクル処理しきれない大量のプラスチックゴミ(年間約150万トン)は中国やタイ・マレーシヤ・ベトナムなどに輸出されて処理されていましたが、現在、それらの国々も輸入規制を始めています。マイクロプラスチックによる海洋の汚染が頻繁にニュースやSNSで取り上げられてさまざまな取り組みが言われてはいても、身の回りのプラスチック包装やゴミは一向に減る気配がありません。自国で出したゴミをわざわざ燃料を使って輸出して他国に押し付けているという認識が最近まで私にはありませんでした。手軽さと便利さを享受して整備された都市での生活のシワ寄せが途上国や地球環境に及ぼしている影響を考えると商品を選ぶ基準もこれからは大きく変わらざるを得ないのではないかと思います。

 

ファッション産業のサスティナブルは

ファッション産業では年間に生産する5,300万トンの繊維製品の70%以上が廃棄・焼却されて毎秒トラック一杯分の繊維製品が廃棄されている計算になるそうです。サスティナビリティという言葉が頻繁に使われるようになって久しいけれども、ファッション産業は原料の調達から紡績・テキスタイル製造・染色・縫製とそれぞれの行程がさらに細かく分業化されていて、流行や気候・景気によって業績が大きく影響を受けます。そのためか環境や労働者の人権問題は常に蚊帳の外で、エコやオーガニックのような考え方が積極的に受け入れられない状況が長く続いていました。とくに日本ではつい最近までフェアトレードや環境配慮型の提案に対しては企業も消費層も消極的で、国内外のファストファッションアパレルのみが拡大し、サスティナビリティという概念をまるで一時的な流行や企業のプロモーション戦略と同義に感じていたのは私だけではないのではないかと思います。

ターニングポイント

 

2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊の縫製工場が入った8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落し死者1,134人、負傷者2,500人以上を出した未曾有の大事故は私の記憶にはまだ新しいです。ラナ・プラザで働く労働者達はビルの異変に気づいていてこのビルで働くことに大きな不安を訴えていました。地元警察から検査のための退去命令が出ていたにも関わらず、ビルオーナーは問題ないと主張。工場の従業員を仕事に戻らなければ解雇の可能性があると脅して、通常通りの業務を求めていたのです。この大事故はファストファッションを製造販売する大手アパレル企業のみならずアパレルメーカーをはじめファッションに関わる業界全体や消費者にも大きな衝撃を与えました。この惨事の背景にはただ責任者を罰し、再発防止策を講じるだけでは済まされない多くの問題が存在することを世界中が知ることで私たちの意識を大きく変化させる契機となりました。製品生産の拠点を発展途上国に置いている大手のアパレルメーカーは抜本的な改善に向けて動き出します。2015年にはこの事故を受けて製作された映画「THE TRUE COST」が公開されて話題となり、安価で大量に消費され使い捨てにされる商品の裏で何が起きているのかを世界の人々に知らしめることになりました。

企業意識の変化

ラナ・プラザの崩落事故後には20か国を越える国のアパレル企業を中心とした220社以が「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全性に関する協定」に署名。縫製工場の安全検査を行って建物の倒壊や火災を防ぎ、労働環境の改善を目指したことで規模の大きい工場では状態が改善し、250万人の労働者の安全が確保され継続的な安全性の検査と指導を行っているとされています。しかし未だに、安全対策の取られていない中小規模の下請け工場も4000近く存在していて万全と言うにはまだまだ程遠いのが現状だと言います。また一方で、最低賃金が上昇し、安全性の確保にともなって最新の設備投資も行われて製造コストも上昇しています。この事故の前と後ではメーカーの意識も消費層の意識も着実に変化していて、欧州で毎シーズン開催される素材展示会ではエコロジーやサスティナブル認証を受けた製品の提案が大きく広がり、ファッショントレンドに必須の要素になっています。ファッションのサスティナブル化を大きく牽引するブランド“ステラマッカートニー”の存在や、ZARAやBershkaを擁する“インディティックス”の「2025年までにサスティナ100%宣言」。日本のファストファッションを代表するファーストリテイリングもサプライチェーン全体での不要な使い捨てプラスチックの原則撤廃等の取り組みを始めるなどアパレルメーカーも素材メーカーもエコや環境配慮素材の開発・提案を急速に増やしていて、エコや環境配慮型素材の問い合わせも多くなっています。

 

消費者意識の変化

2か月程前のある勉強会で美術大学の講師の方が自分のクラス(現役美大生)に行ったファストファッションに関するアンケート結果をシェアしてくれたのですが、その結果では多くの学生がファストファッションは価格が安いのでよく利用していて概ね好意的な印象を持っていました。ファストファッションを敬遠している(良くないと感じている)場合でも同一のデザインが多く出回る等の理由が中心で、環境や人権の問題として意識している学生はごく少数でした。これはラナ・プラザ崩落事故以降ファッションメーカーのスタンスも変化してきている事や、以前のようにシーズンや流行に合わせて次々に服を買い替えるのは極一部の人達で、わたしたちは流行という名のもとに行われている企業のマーケティング戦略にも気づいて本当に必要な物を選んで消費が出来る意識に変化していると感じられます。また多くの企業が真剣にサスティナブルな取り組みを始めていて、社会全体が大きく変化しはじめている事を強く感じますが、オーガニックやフェアトレードが浸透している欧州などに比べ日本ではエコやオーガニックをはじめサスティナブルの取り組みへの意識はまだとても遅れているとも感じます。

私達は今の世界を覆っている資本主義経済の限界にかなり以前から気づいていました。ここにきて科学技術やAIがもたらすパラダイムシフトと平行して見えて来た意識のパラダイムシフトのひとつが、サスティナビリティという大きな流れであり、世界中を巻き込んで行くこの大きな波の向うに人類の新しいありかたが次第に見えて来ていると言ったらちょっと大げさでしょうか?

さて、前置きが長すぎてここまで読んでいる人はまずいないと思いますが…

次回はもう少し具体的に

・国連が採択した世界をより良く変えるための17の目標(持続可能な開発目標)とは

・日本とは対極のサスティナブル先進国スウェーデンはどんな国?

について書いてみますね。

では~

 

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瀧澤則夫

瀧澤則夫

テキスタイル課 課長株式会社クロップオザキ
アウトドア・スペシャリストの瀧澤です。
生地販売一筋でやってきたので、生地のことなら何でもお聞きください。趣味がトレッキングや山登りなので、アウトドアウェアには詳しいです。お気軽にご相談ください。

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